木村重成は豊臣秀頼の家来で、小さいときから、秀頼のそばで仕えていました。
重成が12、3歳の頃のことです。
ある日、大阪の城の中で、坊主と楽しく遊んでいましたが、どうしたわけか、坊主が、急に本気になって、ひどく腹を立てはじめました。
そして、さんざん悪口を言ったうえ、重成にうってかかろうとしました。
いあわせた大人の人たちは、どうなることかと心配しました。
重成は、無礼なことをすると思いましたが、じっとこらえて、とりあわず、そのまま奥にはいりました。
人々は、意外に思って、重成を臆病者だといって笑いました。
それからの坊主は、いばって仕方ありませんでした。
のちに、秀頼が徳川家康といくさをした時、重成は人を驚かすほどの勇ましい働きをしました。
そこで、以前に、「重成を臆病者だ」といって笑った人たちまでが、
「重成こそ、本当の勇気のある人だ。」
といって、感心しました。
木村重成
豊臣秀頼の家来。大坂冬の陣では、徳川軍と対等に戦い全国にその名を広めた。和議にあたっては秀頼の正使となり、その進退が礼にかなっているのを賞された。