ある村に佐太郎という人がいました。
家が貧しいのに、近所の人には、いつも親切にしていました。
あるとき、佐太郎は、近所の家のわら屋根がとても傷んでるのを見て、
「なぜ早くなおさないのですか?」
とききました。
「貧乏で、なおすことができません」
という返事でした。
佐太郎は気の毒に思い、村中の家から、わらを少しずつもらい集め、自分も出して、それで屋根をふきかえさせました。
また、村に、火事で家を焼かれた人がいたときは、自分の家の藪の竹を切って、贈りました。
佐太郎が麦をまいているとき、急に雨が降り出しそうになったことがありました。
佐太郎は、急いで自分の仕事をかたづけて、近所の遅れている人の仕事を手伝いました。
日が暮れても、終わらなかったので、
「せっかくの肥料が流されるから。」
といって、たいまつをつけて、麦まきが終わるまで手伝いました。
尋常小学校修身書 昭和11年