戦前の教科書より:「我が家のおきて」

わたしのうちは、8人家族です。 一番、年齢が高いのは、おじいさんです。昨年、六十一歳のお祝いがありました。 一番、年が小さいのは、去年の春生まれた妹です。四、五日前から、やっと二足三足ずつ歩けるようになりました。 一番やせているのはおばあさんで、一番せいの高いのはおとうさん、一番むじゃきでよく人を笑わせるのは、今年五つになる弟です。 おかあさんは毎朝暗いうちから起きて働きます。 その外の者も、みな日の出ないうちに起きます。私の次の弟は、家中で寝坊してましたが、学校へ行くようになってからは、早く起きるようになりました。 夕方には家中、一緒にご飯を食べて、それから、いろいろ面白い話をします。 一日の中で、この時ほど楽しいことはありません。 私のうちは数代前の先祖が、心をこめてつくったものです。 その頃先祖自身が 「つつましさは家の内を治める上策たり。和平は処世の良道なり。」 と書かれたものが、今も残って、私の家のおきてになって います。 先祖が残したものには、家や、田畑や、その外いろ いろの品物がありますが、一番貴いのはこのおきてです。 私のうちでは、代々このおきてを守って、家を治めたり、世間のつきあいをしたりしてきました。 おとうさんも、 「この家風にそむかないように。」 と言って、いつも私どもをいましめます。 日本語読本 布哇教育会第2期 より

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