ある日、しづ子の家では、おばあさんと、しづ子と、5歳になる妹と、三人で夕ごはんを食べていました。
すると、急に、ごうという音がして、家がひどくゆれだしました。
「これは大きい地震だ。」
と思いましたが、逃げ出すひまもなく、家がたおれて、みんな、その下じきになってしまいました。
しかし、運良く、三人とも、けがはしませんでした。
妹は、おばあさんにすがりついて、泣き出しました。
あちらでも、こちらでも、助けを呼ぶ声がきこえてきます。
しづ子は、まず、おばあさんも、妹も、無事であることを、たしかめました。
それから、這っていって、みんなが、ぬけ出せる隙間を見つけました。
そのとき、ふと見ると、家の中に、火事が起こりかけている所がありました。
「これは、たいへんだ。」
と思って、急いで、おばあさんと妹とを連れて、見つけておいた隙間から這い出しました。
それから、
「おばさん、ここでちょっと待っていて下さい。私は火を消してきますから。」
といって、裏の井戸の水をバケツにくんでは、火の上にかけ、とうとう火を消してしまいました。
しづ子は、「もう、だいじょうぶ」と思ってから、おばあさんと妹とを、あぶなくない所へ連れていきました。
もし、しづ子の家から火事が出たら、すぐとなりの学校に燃えうつり、その先にある、風下の二十軒ばかりの家も、みんな焼けてしまうところでした。
家のことを心配して、急いで帰ってきた、しづ子のおとうさんと、おかあさんは、しづ子の落ち着いたはたらきぶりを聞くと、
「しづ子、よくやってくれた。」
といって、なみだを流して喜びました。