一分で読める

1分で読める明治時代の教科書:「家訓をまもれ」

私の家には、父と母と祖父母がいて、いつも私たちを愛してくれます。 私は、いつも妹と一緒に学校に行き、家に帰った後は復習するようにしています。 弟はまだ学校に通ってませんが、私のそばに来て、読み書きの真似をして、遊んでいます。 我の家は、先祖ががんばって建てた家です。 居間の長押(なげし)には、「勤倹」という字が記された額が、かかっています。 「勤にあらざれば、財を得難く、倹にあらざれば、家を保ちがたし」 という意味です。 そのため、私たちはこの貴い家訓を守って、ますます家を栄えさせることを、心がけなくてはいけません。 もし、この家訓を破るときは、先祖に対して非常に不孝をしたというべきです。 高等小学校国語読本 明治34年

修身の教科書より:一分で読める 馬をいたわる話

昔、木曽の山の中に、孫兵衛という馬方がありました。 ある時、一人の僧が、その馬に乗りました。 道のわるい所に入ると、そのたびに、孫兵衛は、馬の荷に肩を入れて、 「おっと、親方、あぶない、あぶない。」 といって、馬をたすけてやりました。 僧はふしぎに思って、そのわけを尋ねました。 すると孫兵衛は、 「私ども親子四人は、この馬のおかげで暮らしておりますから、 馬とは思わず、親方と思って、いたわるのでございます。」 と答えました。 約束した所へついたので、僧は代金を払いました。 孫兵衛は、まず、そのお金で餅を買って、馬に食べさせました。 そして、家の前に行くと、孫兵衛の妻と子が、馬のいななきを聞きつけて、むかえに出て来て、さっそく馬にまぐさをやりました。 僧は、それを見て、孫兵衛の家中が、みんな心がけがよいのに、たいそう感心しました。 尋常小学校修身 昭和11年より