実用的な内容

修身の教科書より:地震がきたらどうする?

ある日、しづ子の家では、おばあさんと、しづ子と、5歳になる妹と、三人で夕ごはんを食べていました。

すると、急に、ごうという音がして、家がひどくゆれだしました。

「これは大きい地震だ。」

と思いましたが、逃げ出すひまもなく、家がたおれて、みんな、その下じきになってしまいました。

しかし、運良く、三人とも、けがはしませんでした。

妹は、おばあさんにすがりついて、泣き出しました。

あちらでも、こちらでも、助けを呼ぶ声がきこえてきます。

しづ子は、まず、おばあさんも、妹も、無事であることを、たしかめました。

それから、這っていって、みんなが、ぬけ出せる隙間を見つけました。

そのとき、ふと見ると、家の中に、火事が起こりかけている所がありました。

「これは、たいへんだ。」

と思って、急いで、おばあさんと妹とを連れて、見つけておいた隙間から這い出しました。

それから、

「おばさん、ここでちょっと待っていて下さい。私は火を消してきますから。」

といって、裏の井戸の水をバケツにくんでは、火の上にかけ、とうとう火を消してしまいました。

しづ子は、「もう、だいじょうぶ」と思ってから、おばあさんと妹とを、あぶなくない所へ連れていきました。

もし、しづ子の家から火事が出たら、すぐとなりの学校に燃えうつり、その先にある、風下の二十軒ばかりの家も、みんな焼けてしまうところでした。

家のことを心配して、急いで帰ってきた、しづ子のおとうさんと、おかあさんは、しづ子の落ち着いたはたらきぶりを聞くと、

「しづ子、よくやってくれた。」

といって、なみだを流して喜びました。

関東大震災をもとにしているのでしょうか。日本人は今も昔も地震に悩んでいたのですね。

明治時代の教科書より:北海道開拓時代のはなし

ある日、北海道のある村の子どもが4,5人、つれだって、その友達の家をたずねた。
そのとき、その友だちのおじいさんは次のような話をして聞かせた。

「私は今から34~5年前に本州から、ここに移住して来ました。
皆さんのお父さん、お母さん、おじいさんや、おばあさんなどと一緒に、ここに移住してきました。

そのころには、今、札幌というところにある、北海道庁という役所は、まだありませんでした。
そして土地は一体に、たいそう荒れていました。木は生い茂っていて、歩くこともできませんでした。また、道もなく、家もなくて、たいそう、さびしい所でした。

けれども、私どもは、小さい家を作って、住まいました。
そして雪の降るのもかまわず、木を切り、日の照りつけるのも構わず、
土地を開きました。

こうして、毎日、農業を勉めましたから、今は、このような、立派な家に住まって、安楽に暮らしていくことができるようになりました。

北海道には、まだ、奥に、たくさん、開くべき所があります。
これを開くものは、誰でも、私たちのように、安楽に暮らしていくことが、できるようになります。また、土地を開くほかに、魚を捕ったり、石炭を掘ったり、馬や牛を飼ったりするような仕事もありますから、本州などで貧しく、暮らしている人は、早く、ここに、移住すればよいのです。

本州などの人は『北海道は、たいそう雪のふる、寒い所だ。』といって、恐れている人もいますが、(子どもの)みなさんにさえ、こうやって、いられる所ではありませんか。

また、千島の方にある占守島という所にさえ、行っている人もいるではありませんか。」

子どもは、この話をきいて、「もっともだ。」と思った。
そして、また、「今のように安楽に暮らしていくことができるのは、
この老人や、うちの人たちの苦労してくれたおかげだ。」と思った。

尋常小学校読本 明治37年

明治時代の教科書より:実用知識「染料」

青色の染料の原料

染料には種々ありまして青色には多くの場合、藍を用います。藍は温暖で多湿の土地によくできる植物です。徳島県でよくとれます。

また山靛(やまあき)というものがあり、多くは九州の南方にできます。これで染めたものは
たびたび洗濯しても色がおちません。

山靛

薩摩綛(さつまがすり)、琉球上布などはこれで染めたものです。

赤色の染料の原料

赤色には紅、茜などを用います。

 

黄色の染料の原料

黄色にはウコン、クチナシ、刈安(かりやす)を使います。

黒色の染料の原料

黒色には檳榔子(びんやし)、五倍子(ごばいし)、鉄漿などを用います。

 

刈安

イネ科の植物。延喜式にものっている黄色染料です。

檳榔子(びんやし)の木

五倍子(ごばいし)

ヌルデという植物の葉をヌルデシロアブラムシという虫が傷つけることにより「虫こぶ」という袋状のものを作ることがあります。この袋状の物体の成分をインキ,染料の製造原料にすることができます。

染料の配合

このほか、萌黄色を染めるには黄と青、紫色を染めるには赤と青を交えます。
このように配合していろいろの染料を作るのです。

石炭ガスをつくるときにアニリンというものがとれます。このアニリンから
紫色の染料を得ることができます。これに媒染剤を加えるとさまざまの色ができます。
科学の進歩につれてさまざまな染料が発明されました。

 

鉄漿とは?

お歯黒(はぐろ)のこと。鉄屑(てつくず)を焼いたものを濃い茶の中に入れ、これに五倍子(ふし)の粉を加えてその液で歯を染める。

 

高等小学校国語 明治34年