伊藤小左衛門は三重県の人です。代々、農業をしている家の生まれでした。
小左衛門は若い時から産業を起こしたいという志がありました。
外国貿易が始まった頃、製茶業を始めようと思い立ち、山地を開拓してお茶の木を植えました。
他の人にも勧めましたが、人々はそれに従わず、あざけり笑う人もいました。
小左衛門は気にしないで、茶畑を広め、5年後には二十貫目の茶を収穫しました。
のちに横浜港が開港したとき、十数万片のお茶を外国人に売り、二千六百両の利益を得ました。
以前、あざけり笑った者たちも、これを見て感心し、争うように製茶業をはじめました。
そして製茶業は国中に広まり、大変な産出量になりました。
伊藤小左衛門とは?
三重県四日市市の企業家。幕末期から明治初期にかけて四日市地域に近代産業を浸透させ、貿易を重視して産業の近代化を推進した。
高等小学校国語読本 明治34年