松平好房は、小さい時から行儀の良い人で、自分の居間にいる時でも、父や母がおられる方に足を伸ばしたことは、決してありませんでした。 よそに行くときには、そのことを父母に告げて、帰って来た時には、きっと父母の前へ出て 「ただ今かえりました。」 といって、あいさつをし、それから、その日にあったことを話しました。 好房は、父母からものをもらう時は、ていねいにお辞儀をして、それを受けとり、いつまでもたいせつに持っていました。 また、遠くへ出られた父母から手紙をもらった時は、まず、いただいてから開き、読み終わると、また、いただいて、それをしまいました。 父母が何かおっしゃる時には、好房は、行儀よくきいて、おっしゃることにそむかないようにし、 また、人が好房の父母の話をする時でも、すわりなおして聞きました。 好房は、このように、父母をうやまって、行儀がよかったばかりでなく、親類の人にも、お客にも、いつも行儀よくしましたので、好房をほめない者はありませんでした。 松平好房 島原藩の主、松平忠房の長男。21歳で早世したが孝行で知られている。 尋常小学校修身書 昭和11年より