九州の久留米に、井上でんという女の人がいました。 子どもの頃から、ぬい物やはたおりなどの手芸が好きでした。 でんが12、3才のときのことです。 いろいろ工夫して、白いはた糸をところどころ糸でかたく結んでから、あい(藍)でそめて、干してみると、その結んだところが白いままになっていることに気づきました。 この糸で、布を織ってみると、白いまだらが現れました。 でんは、とてもよろこびました。 布のもようはとても珍しく、「しも降り」「あられ織」などと呼ばれ、たくさんの人が欲しがりました。 これが「久留米がすり」の始まりです。 でんは元気づいて、さらに工夫をかさね、多くの織物を作りました。 たくさんの弟子もついて、でんの織物は町の特産品になりました。 どんなことでも深く心をこめて考えれば、よい工夫が浮かぶものです。