世界の頂点 アメリカ上流階級の憂鬱

先祖からの利権や財産を維持し、アメリカを現在のアメリカらしくしてきた古い家系の上流階級たち。植民地だったアメリカを世界一の超大国までリードした偉大な家系です。
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そして名実ともに、世界一の先進国アメリカの格差の頂点にある人も少なくありません。

しかし、その未来予想は、明るいとは言えません。

彼らには、どのような憂鬱があるのでしょう?

 

憂鬱その1:コミュニティの縮小

日曜学校の役割

日本人でも、アメリカの日曜学校のことを聞いたことがある方は多いと思います。

子どもたちを日曜に教会に集めて、キリスト教の教えを伝える慣習です。
大きな教会になると、日曜学校用のバスまであったりするようです。

アメリカ人がどの社会階層なのか、ざっくり知る方法 富裕層の傾向は?」で取り上げましたように、アメリカは社会階層が宗派により分断されている傾向です。
中学や高校といった学校も、私立なら、宗派のあるところが多いです。

日曜学校や私立学校を通して、アメリカの同じ宗派、つまり近い階層の人たちは幼いうちから顔見知りになります。それが成人になってからのコミュニティ形成にも役立っていたのでしょう。

しかしマスメディアやネットによる情報が激増する20世紀後半以降になると、自分の宗派に疑問を持つ人が増えてきます。

 

高学歴ほど増える改宗者

アメリカの大手調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、高学歴層ほど、不可知論者や無神論者になったり、別の宗派に改宗するケースが多いそうです。
こうした人達は自分の子供を、自身が通ったような日曜学校や私立学校には通わせません。

富裕層の多い聖公会は、アメリカのキリスト教宗派の中で、最も高学歴が多いですね。

キリスト教徒の減少はアメリカ全体の傾向ですが、聖公会もまた、信者を減らしています。

日曜学校の出席者も、この50年ほどの間に大きく減少したと報じられています。

公民権運動以降、聖公会がリベラルになり、ある意味「ブレて」しまったことも、信者離れの原因といえるかもしれません。

 

こうした縮小の傾向は、聖公会に限らず、キリスト教を基盤にしたアメリカの上位層保守系コミュニティすべてにみられます。

アメリカの知識層に増加している不可知論者や無神論者は団結より個人の哲学を重視する傾向です。アメリカで多数を占める福音派からの好感度も低いです。どちらかというと知識層の社会的影響力を減少させる変化といえるでしょう。

 

憂鬱その2:新しいタイプの富豪の出現

移民の国と呼ばれるアメリカ。しかし聖公会に多いような旧移民の上流階級は、400年近く前まで家系を辿れるような人もみられます。

彼らは「どこの馬の骨とも知れない」新移民をなるべく排除したコミュニティの中で、代々、信頼関係を築き、政権を握り、ビジネスを広げてきました。鉄道、石油、自動車、軍事などなど・・・

 

ゴールドラッシュ後、大量に押し寄せた経済目的の新移民のうちから、成り上がりの成功者もでてきました。
それでも1900年代前半までの移民はヨーロッパの出身者が多くを占めました。旧移民と同じ文化背景を持つ彼らは、成功して、お金を手にした後は、憧れてきた既存の上流階級を真似て、同じレールを歩みたがる人がほとんどでした。

たとえばビル・ゲイツ氏やクリントン家、トランプ家のような人々です。

旧移民の作ったスタンダードに従順な彼らは、上流階級をおびやかす存在ではありませんでした。

・・・しかし、ネットビジネスのような新しい儲け方が出てきた結果、そのスタンダードが壊れる兆しが見え始めています。

 

枠にとらわれないIT富豪

現在、アメリカで最も裕福な3人といわれているのが、ビル・ゲイツ氏、バフェット氏、ジェフ・ベゾス氏です。
フォーブスジャパンの2017年の記事によると、この三人の資産はアメリカ国民50%の合計以上だそうです。

このうち、ゲイツ氏とバフェット氏は、移民元がどうだったか公表できるほど、しっかりしたヨーロッパ系の出自です。育った家庭も中流以上です。

しかし、べゾス氏だけは、アメリカ人の間ですら、素性がよくわからない人物のようです。
もちろんユダヤ系でもありません。

ベゾス氏自身は白人でキリスト教徒だと自称しています。しかし、それを問う声が国内で出るほど、外見はあまり白人らしくありません。ニューメキシコ州の出身だそうです。キリスト教の宗派もよくわからない状態です。

今までのアメリカで、こうした大富豪はいなかったでしょう。
しかも、この三人の中でベゾス氏が一番若いのです。

亡くなりましたが、シリア系移民を親にもつスティーブ・ジョブスも、ゲイツ氏よりベゾス氏寄りの出自ですね。
ジョブス氏が長生きしてたら、アメリカ社会でベゾス氏と同じような立場になっていたかもしれません。

 

・・・こうした今までの枠にはまらない新富豪たちが圧倒的な富を握ることが普通になってくれば、当然、既存の上流たちの立場は弱くなります。

そしてヨーロッパ的なものにあまりとらわれない彼らは、植民地時代から続く古い家系が体現してきた「ヨーロッパの弟分としてのアメリカ」のアイデンティティを崩す可能性がある人達なのです。

ベゾス氏のような新富豪が、今までのアメリカらしさを形作ってきた上流階級たちをおびやかし、不安にさせる存在であることは間違いないでしょう。

 

「貴族」の黄昏とアメリカの未来

 

建国以来、保守的な価値観を脈々と受け継ぎ、アメリカを超大国にした古い家系の「貴族」たち。

彼らが力を失った場合、アメリカはどうなるでしょう?

上層の「貴族」はイギリス、ヨーロッパとともにありたいと望んできたものの、
下層はラテンアメリカと変わらない腐敗と無秩序をはらんでいる・・・それがアメリカです。

 

現在、ヨーロッパからアメリカへの移民はあまりありません。代わりにラテンアメリカからの移民が毎年の移民全体の半分以上を占めます。土地続きのため不法移民も多いです。次に多いアジア系も、彼ら上流階級と文化や価値観を共有しない人たちです。

・・・数年前、アメリカの掲示板で、こんな未来予想を読んだことがあります。

「このままヨーロッパ以外からの移民が増え続けた場合、
上流の白人たちは、アメリカを見捨てて、ヨーロッパなりタックスヘイブンの国なりに、移住してしまうだろう。
そして北米も、ラテンアメリカと似たような国になってしまうだろう」

・・・私個人としては、ありうる可能性かなと思います。

もちろん5年10年といった近い未来ではおきないでしょうが・・・

 

白人が逃げ出してる国 南アフリカの現在

有色人が増え、白人.が海外に移住し続けている国として、眼前にある例が南アフリカです。

かつてアフリカで最も先進国的といわれた国が、アパルトヘイト時代の南アフリカでした。
それがアパルトヘイトを撤廃し、黒人と白人の平等を実現した後、無秩序と混乱がおこり、転落してしまったことは日本ではあまり報道されてないかもしれません。

南アフリカにおける白人の人口は、1994年のアパルトヘイト廃止前後から減り続けています。

かつて10%弱あった全人口に占める割合は、現在7%台になっています。

アフリカ系、インド/アジア系の人口は増え続けています。白人だけ減っているのです。

 

南アフリカの人種別人口増加推移(https://businesstech.co.zaより)

 

減少の主な理由は海外への移住だそうです。
若い世代の白人ほど移住希望者が多いといいます。

彼らの移住希望先にはオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、イギリスといった国々があるそうです。

 

グローバルノートによると、白人の人口減少と比例するように南アフリカの経済状態は悪くなっています。
アパルトヘイトが廃止された1994年に、世界57位だった一人あたりGDP順位は、昨年2018年では91位まで落ちています。

 

https://www.globalnote.jp/p-cotime/?dno=8870&c_code=710&post_no=1339
https://businesstech.co.za/news/government/260219/south-africas-white-population-is-still-shrinking/
https://businesstech.co.za/news/lifestyle/189135/south-africas-white-population-shrinks-even-further-in-2017/
https://www.pewresearch.org/fact-tank/2016/06/01/10-facts-about-atheists/
https://www.pewforum.org/2014/07/16/how-americans-feel-about-religious-groups/

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