日本人の知らないアメリカ

ディープ・ステートはあるのか?アメリカ国民も認めるカースト制度

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トランプ政権になってから「ディープステート」という言葉をよく聞くようになりました。

アメリカには合法的に選挙で選ばれた人々とは別の、独自のコネクションで繋がった組織(ディープ・ステート)があり、彼らがアメリカを動かしているという陰謀論です・
その組織は複合的で、政府内部だけでなく金融、産業、軍のトップレベルも属するとされています。

英語版wiki「ディープ ステート(Deep State)」によると、2018年3月の調査において、74%の人がアメリカ政府の中に「ディープ ステート」という名ではないとしても、それに近いものが存在すると考えているそうです。
74%という数字はちょっと驚きですね。

過去記事「アメリカ人がどの社会階層なのか、ざっくり知る方法 富裕層の傾向は?」「聖公会 そして日本人と交わらないアメリカ上流階級の正体」で述べた聖公会(Episcopal Church)に代表される東海岸の古い家柄(旧移民の家系)のことを調べるうち、私自身もディープ・ステートのようなものがあるのではないかと思うようになってきていました。

 

英語版wikiから消えた「アメリカの支配階級(Establishment)」の記述

2019年12月現在、英語版wikiでエスタブリッシュメント(Establishment/支配階級)というページを開くと、以下のような、ちょっと不思議な状態が表示されます

 

アメリカ(United States)の見出しだけ存在して、本文がなく、すぐにイギリス(United Kingdom)の見出しになっていますね

実は2019年秋頃まで、このアメリカの見出しの下には以下の文が存在していました(現在も検索エンジンのキャッシュには残っています)。

The United States lacks titled nobility unlike Commonwealth countries.
However there are various prominent American families that have held disproportionate wealth and wielded disproportionate political power not too dissimilar to that of titled nobility. Many of these families often have ties to older East Coast cities such as Boston, New York City, Philadelphia and Newport, Rhode Island.One such group of interconnected elite families is the Boston Brahmins.

 

※訳
アメリカには(イギリスの)連邦国と違い肩書のある貴族は存在しません。
しかし貴族といって遜色ないほどの富と政治的な権力を持つ、さまざまな突出した家系が存在します。それらの家系の多くはボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ニューポート、ロード・アイランドのような東海岸の古い街と結びついています。相互に結びついたそうしたエリート家系グループの一つがボストン・ブラーミン(Boston Brahmins)です。

 

さて、この最後の「ボストン・ブラーミン」って何のことだと思いますか?

ブラーミン(Brahmin)という英語は、インドのカースト制度の最上位「バラモン」を指す言葉です。

つまりアメリカの格差をカースト制度に例えた場合の「ボストンに住むバラモン階級」という意味なのです。

 

英語版wikiで知るアメリカのカースト制度

この「ボストン・ブラーミン」という言葉は、医師オリバー・ウェンデル・ホームズが1860年に著した「ニューイングランドのバラモン階級」という言葉が由来になっているそうです。

ニューイングランドは古い家系の富裕層が多く住む、アメリカで最も歴史の古い地域ですね。下の地図の赤い部分です。
(関連記事:「上流階級WASPが行く学校 アメリカ聖公会の教育方法」)

 

自身もニューイングランド出身のホームズは詩人としても著名な人物で日本語版のwikiページもあります。

ホームズはインドのカースト制度の最上級にあたるバラモンに相当するのが、アメリカではイギリス系プロテスタントに由来をもつ、古くて裕福なニューイングランドの家系だとしたのです。

以下の画像は英語版wiki ボストン・ブラーミンのページの一部です。

 

画像右上の白黒写真の人物はテン・スクールのひとつ、チョート・ローズマリー・ホールの創設者 チョート氏です。
(関連記事:「ハイスクールに行かないアメリカの富裕層たち。上流階級の学校とは?」)

他にも50あまりの家名がリンク付きで紹介されています。
(くわしくは別記事「アメリカ ボストンのバラモン階級(ボストン・ブラーミン)」または英語版wiki「ボストン・ブラーミン」

 

カーストの頂点 ボストンのバラモン階級の特徴

英語版wikiは「ボストン・ブラーミン」の特徴を以下のように述べています

  • メイフラワー号乗員など、植民地時代に最も早くから移住した人々の子孫
  • ボストン・ブラーミン特有のアクセント
  • ハーバード大学と縁があることが多い
  • ユニタリアン、聖公会または会衆派教会(Congregationalist)、メソジスト派の信者が多い
  • 伝統的なイギリス系アメリカ人の慣習を維持している(イギリス紳士の伝統を維持。レディと女性の間に区別をおくなど)

ファッションにおける「アイビー」「プレッピー」といった育ちの良さを表す言葉は、彼らのスタイルの模倣からきています。

 

日本人でも知ってるバラモン階級の血をひくアメリカ人たち

上で述べたwikiのボストン・ブラーミンのページを見ると1800年代以前に活躍した人物が目立ちます。日本人に馴染みのない大学関係者や地方の政治家も多いです。

しかし、それだけでなく、日本人が「エッ!」と驚く現代の大物の関係者もいます。

ビル・ゲイツ

ビル・ゲイツの母は銀行家の家系の出身で、自身も女性初の銀行の取締役になるような人物でした。マイクロソフトの成功は、彼女がIBMのCEOと親しかったため、彼を通じて息子の会社を援助できたことが大きいといわれています。

彼女はボストン・ブラーミンのフィリップス家の血縁でした。

現在はカトリック教徒のビル・ゲイツですが、もともとは会衆派教会(Congregational Church)というあまり聞き慣れない宗派の出身でした。

そして上に挙げたボストン・ブラーミンに多い宗派のひとつに、会衆派教会があります・・・そういうことだったんですね。
会衆派教会はメイフラワー号に乗ってきたような初期のピューリタンに由来する宗派だそうです。

フィリップス家は「ハイスクールに行かないアメリカの富裕層たち。上流階級の学校とは?」でとりあげたテン・スクールフィリップス・アンダバーそしてフィリップス・エクセター・アカデミーの創設者も出しています。

 

ケリー元国務長官

ジョン・ケリー氏はオバマ政権で大統領選のため国務長官を退いたヒラリーさんの後任をつとめた人物です。

ケリー氏の母親は、ボストン・ブラーミンのフォーブス家の出身で聖公会信者でした。

裕福な母方の親族の援助を得て、ケリー氏はスイスのエリート向けボーディング・スクールに進学します。
帰国後、前記事「上流階級WASPが行く学校 アメリカ聖公会の教育方法」で取り上げたSt. Grottlesexに属するセント・ポール・スクールを出て、ビッグ・スリーの一つ、イェール大学に進学します。

ビッグ・スリーとはアメリカでWASPが出る大学の代表的な3校、ハーバード、イェール、プリンストンのことです。
ケリー氏は絵に描いたようなアメリカン・エスタブリッシュメントの学歴の持ち主です。

これら「ボストンのバラモン階級」と呼ばれる家々は、当然ボストンを拠点にしています。

ニューイングランド~東海岸全体なら、こうした「バラモン階級」は、もっとたくさんいるのでしょう。

表向き「移民の国」「自由の国」を標榜するアメリカにおいて、彼らの存在は声高に出せるものではありません。
こうしたエスタブリッシュメント/支配階級の存在を、民主主義に反するとする意見もあります。

 

ディープ・ステートはバラモン階級のこと?!

トランプ氏によって「ディープ・ステート」という言葉を知った人にとって、この言葉はオバマ氏クリントン氏といった民主党の政治家や、ユダヤ系左派と結び付いていると思います。

しかし、おそらくそれは現実とずれているでしょう。ディープ・ステートは違うものです。

馬渕睦夫「知ってはいけない現代史の正体」解説では、ディープ ステートが力をもつようになったのは100年ほど前のことだとあります。
英語版wikiにも政治学者ジョージ・フリードマンの説として1871年以降だとあります。

しかしユダヤ系がアメリカで強い力を持つようになったのは、ここ20年ほどの話です。
(関連記事:「「児童買春の島」大富豪エプスタインの生い立ち ユダヤ系アメリカ人の現実」)

トランプ氏のディープ・ステートという言葉は、本当はユダヤ系を指しているのではないのでしょう。

100年ほど前のアメリカの主な支配層はユダヤ系ではなく、バラモン階級=旧移民の家系WASPの人たちです。

ひょっとしたらトランプ氏にとってさえ、ユダヤ系や民主党批判として濁さざるをえないほど、アメリカのバラモン階級を直接批判することは怖いことなのかもしれません。

トランプ氏の人生に大きな影響を与えたと思われる冷戦期のアメリカは聖公会などWASP=バラモン階級の力が強かった時代でした。最近もCIAなど国の中枢部に多くいるといった記事がでています。
(関連記事:
トランプ ファミリーと共産圏を結ぶ3つの縁 アメリカの敵は誰か?
上流階級WASPが行く学校 アメリカ聖公会の教育方法」)

 

・・・英語版wikiの「エスタブリッシュメント」のページから、ボストン・ブラーミンやアメリカ東海岸の支配階級についての記述を消した人物は誰なのでしょう?
その理由はトランプ氏の活動と、果たして関係があるのでしょうか?

 


↑検索エンジンduckduckgoに残る上記引用のキャッシュ

 

余談ですが・・・
上に述べた元国務長官のケリー氏は食品大手ハインツとのつながりが知られていますね。
ケリー氏の現在の妻は、ハインツ創業者の曾孫の未亡人です。亡夫の莫大な遺産を相続しています。
ケリー氏は離婚した最初の妻との間に子供がいますが、この現在の妻との間に子供はありません。ハインツとの血縁的なつながりはないです。

意外にもハインツ創業家と血縁関係にあるのは、トランプ氏です
ハインツの創業者からみて、トランプ氏の父方の祖父は母方のまたいとこ(はとこ)にあたります。

↑ケリー氏と妻であるハインツ未亡人テレサ

 

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2019年、当サイトは「なぜアメリカの真似をする国は失敗するのか?理由は2種類の白人たち」を皮切りに、半年以上かけてアメリカの古い移民の家系=上流階級WASP=バラモン階級のことを取り上げてきました。

それは戦後日本に最も大きな影響を与えてきたアメリカという国の実像を知らなければ、日本が現在ある状況を正確につかむことはできないと思うからです。

今の日本では、失われた30年の衰退の理由を、日本人の国民性や日本文化の欠点のせいだとする説が多いですね。

しかし、私はそうは思いません。

日本経済が再生できないまま、年々貧しくなっていく理由とは、何でしょう?
次回から、その疑問の答えといえる、アメリカ上流階級に関する記事のまとめに入ろうと思います。

 
※外部リンク「入会は極めて困難、最も排他的な9つの大学秘密社交クラブ」
アメリカ、イギリスの古い家系の上流階級についての興味深い記事です

 
<関連記事>
なぜアメリカの真似をする国は失敗するのか?理由は2種類の白人たち

アメリカ人がどの社会階層なのか、ざっくり知る方法 富裕層の傾向は?

上級国民WASPとは何か?ヒラリーさんとブッシュ氏 ケネディ家の差

上流階級WASPが行く学校 アメリカ聖公会の教育方法

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Category:Phillips_family_(New_England)
http://fabpedigree.com/s053/f164293.htm
https://en.wikipedia.org/wiki/George_Phillips_(Watertown)
https://en.wikipedia.org/wiki/Trump_family
https://en.wikipedia.org/wiki/Boston_Brahmin
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Establishment
https://en.wikipedia.org/wiki/Deep_state_in_the_United_States

 

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